自社の商品をインターネットで直接消費者に販売したい、オンラインヨガ教室をやりたい、オンラインサロンを作りたいなど、インターネット上で商品を販売したりサービスを提供する場合、利用規約等をインターネットサイト上に準備する必要があります。具体的には、少なくとも、①利用規約、②プライバシーポリシー、③特定商取引法上の表記を作成します。①利用規約には、インターネットサイトの利用に関するルールや商品売買・サービス提供に関するルールを記載します。②プライバシーポリシーには、個人情報の取扱いに関するルールを記載します。③特定商取引法上の表記には、特定商取引法という法律で、記載が義務付けられている事項を記載します。
デパートの化粧品売り場で化粧品を買う場合、その場でお客様に商品に問題がないことを確認してもらいますし、商品の交付と決済は同時に行われますので、問題が起こる可能性は少ないといえます。しかし、オンラインショッピングで化粧品を買う場合、決済のタイミングと商品交付のタイミングはずれますし、お客様は買う前に商品自体を確認できないので、トラブルは店舗販売と比べて起きやすくなります。事業者としては、このようなトラブルから身を守るために、①利用規約を作り必要があります。お客様にとっても、予めルールを示してもらったほうが、気持ちよく取引ができます。
次に、デパートの化粧品売り場で化粧品を買う場合、お客様は氏名・住所などの個人情報を提供する必要はありません(カスタマー登録を勧められることもありますが、これはしなくても商品は買えます)。しかし、オンラインショッピングの場合、配送のために一定の個人情報を提供する必要があり、事業者は必然的に個人情報を取り扱うことになります。よって、個人情報の取扱いのルールを決めるために、②プライバシーポリシーが必要になります。
更に、通信販売(インターネットショッピングもこれに含まれます)は、消費者が不利益を被りやすいので、特定商取引法という法律がこれを特別に規制しています。例えば、通信販売においては、広告は消費者にとっての唯一の情報獲得手段なので、事業者は一定の事項を広告に表示しなければなりません。このような法律を遵守するために、事業者はインターネットサイト上に、③特定商取引法上の表記を掲げる必要があります。
事業者の方は、インターネット上の商品販売やサービス提供は、店舗取引に比べてより複雑でトラブルの起きやすい取引形態であること、特定商取引法という特別な法律の規制を受ける取引であることをしっかり理解し、これらの規約を準備してください。
これらの規約の作り方ですが、自社のビジネスモデルに基づいてカスタムメイドする必要があります、他のウェブサイトの規約は参考になる部分はあっても、コピペはできません。弁護士の目から見ると、正しくない規約、不十分な規約も溢れていますので、コピペはリスキーです。ウェブサイトの制作業者さんがこの規約まで準備してくれるケースもあるようですが、私の経験上、不十分なものを提供されるケースも多く、私も、クライアントから確認を依頼され、一から作成し直したことが何度もあります。規約の法的効力は契約書とほぼ同一です。契約書の作成は必ず弁護士に依頼しているのに、規約は依頼しないという方もいます。よくある紙の契約書という体裁ではないので、軽く考えてしまうのかもしれませんが、むしろ、大多数のお客様との取引がこの規約に規律されることになりますので、しっかりしたものを作成する必要があります。
最後に、規約作成を依頼するタイミングについてもお願いがあります。事業者の方は、よい商品・サービスを作ることや、美しく見やすいウェブサイトを作ることに注力される傾向があるので(これはもちろん大事なことです)、規約の作成を後回しにしがちです。実際、ウェブサイトローンチの前日やローンチ後に規約作成を依頼されることも少なくないのですが、弁護士としても、事業者の方のご希望に合ったよい規約を作成するには、打合せの時間や起案の時間が一定必要になります。余裕をもって、少なくともローンチの1か月前までくらいにご連絡いただければ有難いと思います。
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